渡邊幹彦ゼミについて(学部生向け)
Ⅰ 渡邊幹彦が研究していること=ゼミ生に教えてあげられること
渡邊幹彦研究室は、自然資源を有効利用した経済発展の研究を行ってきました。
地域の自然資源を有効利用した経済発展とは、
環境問題の解決と経済的に豊かになることを同時に実現することです。
特に、生物多様性と地球温暖化(気候変動)という今日の2大環境問題を取り扱っています。
(2013~2014年に山梨県が経験した猛暑と記録的豪雪は、これらの環境問題によるという説が有力です。)
特に、生物多様性の研究については、これまで、
遺伝資源へのアクセスと利益配分
という分野を研究してきました。
これについては、私は専門家の間で認められています。
今後は、
レジリアンス社会
というものを研究していきます。
レジリアンス社会とは
狭義には、災害に強い(レジリアントな社会)です。
もともとは、災害防止・減災から発生した概念です。
しかし、広義には、
経済やインフラが強い社会の観点が入ってきます。
格差や貧困が少なくて、しっかりと経済が成長し続ければ、
社会は豊かで、外的なショックに強くなります。
広義のレジリアンス社会が大事なら、
経済学の観点からこれを研究することはとても重要となります。
貧困、格差、成長を扱うのは経済学だからです。
また、レジリアンス社会は、
地域
グローバル社会
の両方が大事です。
地域が発展しなければ貧困は無くならないですし
海外(グローバル社会)との競争はさけて通れません。
この研究のために、
マクロ経済学
ミクロ経済学の消費者理論
開発経済学(国際経済学とグローバル経済を含みます)
環境経済学
の知識を総動員します。マクロ経済学のみではないことに注意してください。
Ⅱ ゼミで行うこと
ゼミでは以下のことを行います。
①開発経済学の教科書の輪読
②環境経済学の講義
③統計ソフト SPSSによる実習
④夏休みの集中ゼミ マクロ経済学の総復習
⑤卒業論文の指導
輪読とは、第何章はだれだれ、と決めておいて、順番に本を読んで、その内容について、まとめて発表することです。
ゼミで実施することとしては、極めて普通のことです。
まず、開発経済学の教科書を読みます。
開発経済学とは、国が発展するためにはどうすればいいか、を集中的に考える学問分野です。
主に取り扱われるテーマは、
貧困問題
所得格差の問題
地域の格差の問題
ジェンダー(男女の公平)
持続可能な発展(環境保全と経済発展の両立)
国際貿易と国際金融
産業政策
国際協力
などです。
もともと開発経済学は、いわゆる、発展途上国について考える学問でした。
だから、教科書を読む過程で登場する例は、途上国が多いです。
しかし、最近の日本の国内事情を考えると、貧困や格差の問題や、地域活性化など、開発経済学の考え方を応用することができます。
だから、マクロ経済学を履修した後に、開発経済学を勉強すると、自然に理解できますし、学生にとっても関心が高いテーマの勉強になります。
また、開発経済学の勉強は、国際経済とグローバル経済の応用の勉強となります。
グローバ国際経済やグローバル経済の知識がかなりしっかり身に付きます。
そして、グローバル経済の知識は、就職活動の時に、あるいは、社会に出た後、そのまま役に立ちます。
次に、環境経済学の実習をします。
輪読、ではなくて、実習としているのは、
教科書を輪読するのではなく、私の方から、講義形式+実習によって、環境経済学の講義と環境価値評価の実習をするためです。
こちらから教えます。
そのあとで、コンジョイント分析による環境の価値評価の実際の方法を教えます。
この時に、SPSSというコンピュータ・ソフトウェアを使います。
わかりやすく教えますが、コンジョイント分析は、本来かなり高度な内容です。
それをわかりやすく教え、SPSSの使い方も教えます。
環境の価値評価というのはいろいろな分野で応用できるので、回数は少ないですが、将来、社会に出てから、そのまま使えます。
次に、夏休み前に、1日だけ、マクロ経済学の英文教科書を読みます。
マクロ経済学の教科書を読むのは、まずは、専門科目で学習したことの「ブラッシュ・アップ(すでに得た専門知識を、復習して整理し、増強する)」したいからです。
ゼミに入るまでに、マクロ経済学の科目を履修します。これを復習して、確認しながら、いわば別の説明である英語での教科書の説明を読んで、知識を整理するわけです。
マクロ経済学の知識のブラッシュ・アップと使える英語の獲得という一石二鳥です。
「英語で教科書を読むなんて、無理!無理!」と敬遠して、せっかく、経済学に興味があるのに、
あるいは、環境問題に興味があるのに、渡邊ゼミを敬遠してしまうのは、とてももったいないことです。
ゼミでは、学生が読むのに丁度よいペースと分量を考えて実施します。
もともと英語が好きな科目である人は、問題なく読めます。
要は、頑張りです。
ゼミ生みんなで分担して読み切った後の達成感は、それは、すばらしいものがあります。
3年生の後期=最後には、「持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals; SDGs」をじっくり読んで、じっくり議論します。
我々にとって望ましい社会とは何か?
それについて、これまで学習した知識を総動員して、考え、整理し、議論します。
持続可能な開発目標とは、国連主導のもと、次の数十年間、世界はどこにむかって良い発展をして言ったらよいかという目標です。
経済はもちろん
環境
災害防止
格差が重要な位置づけとなります。
健康や男女平等、食料の安全保障と言った内容が入っています。
これをもとに、
自分の生まれそだった地域、グローバル社会について卒業研究につなげていくと
有意義な学習を終えて卒業することができます。
卒業論文の指導
卒業研究のテーマは、幅広い選択肢から選ぶことができます。
私の研究テーマが、生物多様性や気候変動だからといって、それに関するテーマを選択しなければならない、ということは全くありません。
(もちろん、環境の、特に、生物多様性と結び付けるとかなり高度な指導ができますが、これにこだわることはありません。)
例えば - あくまで例えばですー、以下のような選択肢が考えられます。
便宜的に分けてありますが、本来はどの分野も密接に関係しあっているものです。
関係しあっているので、マクロ経済学(科目履修) → 開発経済学 → 環境経済学 → これらを包括する目標=SDGsと
ゼミの勉強を進めるわけです。
1 マクロ経済学の方向
アベノミクスの効果について
所得格差について
日本の貧困問題について
産業育成政策について
など・・・
2 開発経済学の方向
地域の産業育成について
地方から都市への人口の流出の経済的分析
途上国の貧困緩和
途上国の貧困緩和から学ぶ日本の貧困解決策
(自分が興味ある国を取り上げて)その国に対する日本の経済援助の効果
など・・・
3 環境問題の方向
温暖化問題の現状 - 国際条約交渉の経済学的分析
生物多様性保全の現状 - 国際条約交渉の経済学的分析
名古屋議定書の現状 - 国際条約交渉の経済学的分析
山梨の環境の価値分析 - 環境資産により豊かさを再考する
山梨県の観光資源の価値の計測 - 富士山、昇仙峡、ブドウ観光の資源の価値を測る
コンパクトシティ政策の費用便益分析 -環境保全の価値の観点から
など。。。
4 新しいテーマ
レジリアンス社会 = 山梨県の防災対策 - 気候変動への適応策として、大雪への対策を考える
など。。。
応募要件:事前に研究室に来て、興味あることや将来の進路について、私とおしゃべりをすることが、応募の要件です。
試験ではありません。事前に来ない学生は、応募できません。
選抜に関して、成績はあまりみません。重要視するのは、普段の講義の受講態度です。